労働審判とは
①労働審判とはどのような制度ですか
労働審判制度とは,個々の労働者と使用者の間の労働関係(個別労働関係)について裁判官1名と労使の専門家2名で構成する委員会(労働審判委員会)が3回以内の期日で審理し,調停による解決を試み,調停が成立しない場合には審判を行う制度です。
②労働審判の流れはどのようなものですか
③労働審判の申立書が届いたらどうすればいいですか
労働審判は,第1回期日に労働審判委員会が主張と争点の整理を終えなければならないので,相手方(申立を受けた使用者)は,第1回期日の前に原則として主張(反論)を記載した答弁書と証拠を全て提出しなければなりません。しかも,労働審判は,申立から40日以内に第1回期日が指定され,その1週間前までに反論の提出を求められるので,主張(反論)証拠を提出するまでに30日程度しか余裕がありません。また,第1回期日の変更も原則として認められません。 従って,労働審判の申立書が届いたら直ちに労働事件(労働審判)の経験のある弁護士に相談し,事件の委任をすべきです。
④労働審判の答弁書(主張・反論)の仕方について注意すべき点がありますか。
労働審判委員は,答弁書を中心にみて証拠は当初あまり見ないようです。従って,答弁書に,証拠で提出した陳述書の内容も記載し,主張(反論)が具体的な証拠に裏付けられていることも示す必要があります。
⑤労働審判は弁護士に任せ、使用者の代表者や担当者等は出席しなくとも大丈夫ですか
労働審判委員会は,労働審判の期日に出頭した関係人から事情を聴取して証拠調べをします。従って,使用者側で事情を説明できる方や事件の関係者が出席することが必要となります。また,各期日に調停(話し合い)が行われるので,場合によっては交渉権限のある方が出席する必要があります。
⑥調停がまとまらない場合にはどうなるのでしょうか
第3回期日に,審判が口頭で告知されます。審判に対し,当事者は2週間以内に裁判所に異議を申し立てれば,労働審判はその効力を失い,申立時に遡って,地方裁判所に訴え提起があったものとみなされます。
⑦労働審判の費用のご案内
労働審判制度は,今までの労働関係の法的手続き(訴訟・地位保全の仮処分)などにくらべ,30日程度しか使用者に反論の準備期間が与えられず,3期日以内に調停成立(和解)するか否かの判断を使用者に迫るもので,使用者にとっては厳しい制度といえます。
ですから,労働者と労働関係においてトラブルになりそうであれば,労働関係に強い弁護士と相談して証拠の収集等の準備をしておく必要が最低限あります。