事例でわかる 労働審判手続の流れ&対応のポイント
- 1.増加する労使トラブルと労働審判制度の現状
- 2.労働審判手続の特徴
- 3.労働審判手続の仕組み
- 4.労働審判に対する企業・弁護士それぞれの関わり方
- 5.事例でわかる「労働審判」対応時のポイント&留意点
- ①第一回打ち合わせのポイント →(5月24日 D弁護士事務所にて)から
- ②第二回打ち合わせのポイント →(6月14日・D弁護士事務所にて)から
- ③第一回審判期日のポイント→(6月18日 第1回期日:書記官に申立人相手方双方が審判廷に入るように求められる)から
2.労働審判手続の特徴
平成16年4月に労働審判法が制定され、裁判官(労働審判官)と労使専門家(労働審判員)からなる労働審判委員会が3回以内の期日で調停と審判により簡易・迅速・専門的に紛争の解決を図るため、労働審判手続きが全国の地方裁判所において平成18年4月から実施されています。
労働審判制度は、企業と個々の労働者間の権利義務に関する紛争(「個別労働関係民事事件」)を対象として調停と審判を行う手続きです。
その特徴は、次の①~⑤の通りです。
① 労働審判の手続きは、地方裁判所において、裁判官1名と労働関係の専門的な知識経験を有する者2名(労使それぞれから1人ずつ)によって構成される合議体(労働審判委員会)が行います。労使の審判員の専門的な知識経験を活かすことによって、紛争に対し、より適正妥当な判断を希求するためです。
② 労働審判手続では、原則として「3回以内の期日において、審理を終結しなければならない」として、紛争の迅速で集中的な解決が図られます(労審15条2頃)。これは、個別労働紛争が労働者の生活・生存に密着するからです。
③ 労働審判手続では、「調停の成立による解決の見込みがある場合にはこれを試み」る(同1条)、として、手続きの中に調停を包み込んでいます。調停による解決が成立すれば、それは裁判上の和解と同一の効力をもちます。
④ 調停によって紛争を解決できないときは、審判が下されます。審判では、権利関係を確認したり、金銭の支払等の財産上の給付を命じたりすることができ、また、その他紛争の解決のために相当と認める事項を定めることができます。この審判を当事者が受諾すれば、紛争は解決しますが(その場合、審判は裁判上の和解と同一の効力をもちます)、当事者が受諾できないときは、2週間以内に異議を申し立てるべきこととされています。(同21条1項)
⑤ 労働審判に対し、当事者から異議の申立てがあれば、労働審判は失効し、労働審判の申立てのときに遡って訴えの提起があったものとみなされます。